ベストパートナー

駅前のファーストフードでホットドッグをほおばっていると、ガラス越しのテラス席にサラリーマンらしき男があらわれた。緑のトレイには灰皿とコーヒー。ランチタイムというにはもう遅いし、出先でひと休みといったところなのだろうな、と想像する。ちょうど僕に背を向けるように腰をかけたので、襟筋に肩こり用の磁気シールが貼ってあるのが見えた。磁石の辺りが丸く突起していて、なんだかスイッチのようだ。押すと、その人にそっくりの外見になるスイッチ。ひょっとしたら彼はコピーロボットなのかもしれない、なんて。いや、まさかね。

でも、もしも彼がほんとうにコピーだとしたら、こんなところでサボっていてよいのだろうか。僕らがもうひとりの自分を求めるのは、ふたりで仲よく遊ぶためではないだろう。逃れられない仕事や家族サービス。僕らに必要なのは、誰にも代われないことを代わってもらえる相手のはずだ。ただ、自分に自分の身代わりを頼むのであれば、あまり期待しすぎてもいけないのだろう。たぶん、窓の向こうで煙を吐いている中年男によく似た男が、どこかの喫茶店で道草を食っているはずだ。