2009-01-01から1年間の記事一覧

すれ違い

部屋に戻ると縦長の四角い書き置きがひとつ。それが2枚、3枚と増えていき、一週間で4枚。宛名の筆跡は日を追うごとに粗くなり、次第に重苦しい空気が漂いはじめる。こんな荷物にいつまでも関わっているわけにはいかないのだ。舌を打ち、階段を駆けおりる配達…

低気圧ボーイ

正午を過ぎても、まだベッドから起きあがれない。かろうじて窓をすり抜けてくる微弱な光。空気が重い。気圧が低い。何かが渦巻いているその気配を、からだが敏感に察知してしまう。いつかは僕の心の重さもヘクトパスカルやミリバールで予報されることになる…

ある装置

月並みな話で申しわけないのだけれど、給水塔のある風景が好きだ。たとえば、夕暮れどき、集合住宅の屋上。あの妙に思わせぶりな空の余韻に、くすんだクリーム色の球体や立方体が浮かびあがったところとか。あまりに見つめすぎると怪しまれてしまうので、歩…

エイリアン

エイリアンには髪がない。ラージノーズ・グレイも、リトル・グリーンマンも、卵のようなつるりとした頭部だったと、遭遇者たちは証言している。この漆黒の夜空のどこか、遙かに高度な文明をもった異世界では、僕ら幼き人類の悩みなどとっくに解決されている…

クローバー

古いビルの一角で、そこだけコンクリートがはだけていた。植栽の跡だろうか。湿っぽい土があらわになって、ぽつぽつとクローバーが芽吹いている。スーツの裾を気にしながら、僕は四つ葉を探してみる。なぜだろう。クローバーを見つけると軽い強迫観念にから…

シラフ

このところ、「ひとり」を意識することが多くなった気がする。それは、真夜中のオフィスで感じていた空虚さや、仕事から離れていたころの切羽つまった孤独感とは少し違う。うまく説明するのはむずかしいのだけれど、たとえば午後七時に帰宅して、キッチンの…

初日

連休を目前にして、君のいる世界に復帰することになった。初出社は今日、つまり5月1日。つづいて、2・3・4・5・6と休日。7日8日と出社して、9日10日はまた休み。いまいちパッとしないはじまりだけれど、僕らしいといえば僕らしい。淡い色あいから、少しずつ…

ベストパートナー

駅前のファーストフードでホットドッグをほおばっていると、ガラス越しのテラス席にサラリーマンらしき男があらわれた。緑のトレイには灰皿とコーヒー。ランチタイムというにはもう遅いし、出先でひと休みといったところなのだろうな、と想像する。ちょうど…

習慣

昼頃に目を覚ます。雨もすっかり上がっていたので、緑を窓辺に出してやる。白い手すりの格子に鉢植を載せ、ステンレス製の計量カップで水をそそぐ。べつに計量カップに特別な意味があるわけではなく、もちろん正確な分量を計っているとかそういうことでもな…

厄介な問題

行きつけの理容室が店を閉めることになった。 外出ついでに訪ねてみると、いつものガラス扉に見慣れない貼り紙があり、この4月で閉店することが感謝の言葉とともに記されていた。学生のころから通っているので、もう8年ほどになるだろうか。ああ、まいったな…

ネコが逃げた

先日、駅前のスーパーに向かって歩いていたときのこと。僕の少し先をネコが歩いていた。べつにとりたててネコが好きというわけではないけれど、あの生きものの佇まいにはどことなく心惹かれるものがある(それから僕は犬っぽい犬を見るのが好きだ。この話は…

円い罠

直線的な時間を生きているような気になっているけれど、僕らをとりまく時間の概念は円環的なものが多い。暦は12ヵ月でひとめぐりだし、干支もぐるりとまわって子にもどる。それは、時間というものが天体の動きをもとに発想されてきたせいかもしれない。東の…

通勤

めずらしく通勤時間帯に家を出る。電車はひと駅ごとにドアが開き、溜息のような音とともに僕らはホームを行きつ戻りつする。波間に揺られる貝殻のような気分、なんていう比喩はあまりに少女趣味かもしれない。でも、いずれ潮のうねりに連れ去られていく僕ら…

untouchable

多摩川沿いを自転車で走る。平日にのうのうとサイクリングを楽しめる身分にうしろめたさを感じないわけではないけれど、そんな焦りも春風に流されてどこかへ行ってしまう。川岸には桜の木がいくつも植えられていて、風が吹くたびに花びらが雪のように散って…

カブトムシのシャツですね

へんな陽気。ヒマだ。どこか行けばいいのかな。でも出かけるあてはさっぱり。とはいえまったく陽に当たらないのもなんか癪。じゃあラーメンでも食いにいこうか、とサンダルぱたぱた商店街へ向かう。店のおばちゃんはとてもフレンドリー。誰にでも気さくに話…

Harada Strikes Back!!

なんだマキシムはAGFの商品じゃないか。そうか、僕が石田さんだと思っていた原田さんはそれを伝えようとしてモヤーンと出てきたわけか。コーヒーギフトは奥が深い。でもブレンディじゃないからやっぱりお門違いだ。 マキシムが空になったのでUCCを買ってきま…

よそ者がしゃしゃり出る

1か月くらいまえにインスタントコーヒーの素をもらった。で、ことあるごとにカフェオレをつくっていたのだが、なぜかいつも原田知世の顔が浮かぶのでおかしいなと思っていたらコレだった。 でも、わが家のコーヒーはAGFじゃなくてマキシムだ。せっかく出てき…

さよなら複製都市

承前っぽいよ 貨幣鋳造を担う役所として生まれた「銀座」。それはいつしか繁栄のシンボルと見なされるようになり、商いを糧とする人々の間ではある信仰が広まっていきました。いわゆる「銀座信仰」のはじまりです。メッカ銀座を訪れることは全国の商人の憧れ…

Mt. FUJI の分身と分割

昨日NHKで富士塚の特集を観た。富士塚というのは、ちっちゃい富士山みたいなもの。江戸時代に富士講という山岳信仰がブームになったとき、富士山まで行けない人たちががんばってつくってたらしい。えいえい。「喫茶ミラノ」とか「戸越銀座」とおなじ発想だ。…

MY COFFEE SHOP IS OPEN.

スタバにあらわれた男と女。といっても年の頃は七つか八つ。手と手重ねる姿も睦まじく、傍目には兄妹か御学友といった様子。身成身支度は今風だけど、流行物じみた嫌味はない。洗練という言葉をキッズサイズに仕立てれば、まさにこんな感じかといったところ…

おめでとうございます

昨日はカレー、今日もカレー。作りおきして手間いらず。おせちの発想でふつうの料理を食べています。丑年だけどポークカレー。今年もよろしくおねがいします。 ♪ Cowgirl In The Sand / Neil Young