すれ違い

部屋に戻ると縦長の四角い書き置きがひとつ。それが2枚、3枚と増えていき、一週間で4枚。宛名の筆跡は日を追うごとに粗くなり、次第に重苦しい空気が漂いはじめる。こんな荷物にいつまでも関わっているわけにはいかないのだ。舌を打ち、階段を駆けおりる配達員。無言の部屋に荷物を運びつづけるのは、いったいどんな気分だろう。盛りを過ぎたとはいえ、残暑は厳しい。作業着の背中を濡らす汗染みのように、悪意はじっとりと広がっていく。