untouchable

多摩川沿いを自転車で走る。平日にのうのうとサイクリングを楽しめる身分にうしろめたさを感じないわけではないけれど、そんな焦りも春風に流されてどこかへ行ってしまう。川岸には桜の木がいくつも植えられていて、風が吹くたびに花びらが雪のように散っていく。それはそれでいとおしい日本の春なのだけれど、なんだか演出が過ぎていて僕の性にはあわないみたいだ。でも、中洲を埋めつくす菜の花のみずみずしさには、しばらくペダルを止めてみたくなる。きっと誰も足を踏み入れないまま水の底に消えていく、そんな春があることを、あの人たちは知らないんだよ。